延岡市幸町にある「風の菓子 虎彦」。1949(昭和24)年創業の和菓子屋「とらや」から始まり、以来70年以上地元の人たちに愛され続けているお店です。令和元年に屋号を「日向の国 虎屋」から「風の菓子 虎彦」へ、商号を「株式会社 虎屋」から「虎彦 株式会社」へ変更しました。「和菓子の命は餡」という信念のもと、全国にファンがいる「破れ饅頭」や極上のどら焼き「極天(ごってん)」などの和菓子のほかに、ケーキをはじめ本格的な洋菓子も製造販売しています。
昨年5月1日からは、車による移動店舗「虎の子便」をスタートさせました。新型コロナウイルスの影響でお客さまの来店が激減したことにより、上田社長は社員と一緒に何ができるかを真剣に考えたといいます。
「状況が大きく変化し、自分たちも変わらなければいけないと強く感じました。『お菓子が欲しいけどお店に行けない』というお客さまの声もあり、だったら自分たちがお客さまのもとに出向こうと意見が一致しました」。
「虎の子便」には、40種類・数百個の和菓子と洋菓子を載せ、童謡や唱歌を流しながらゆっくりと走ります。住民が手を挙げたらそこで停まり、販売するスタイル。当初は車1台でしたが、反響が大きくなり途中から2台に増やし、日にちとエリアを決めて延岡市全域を回っています。さらに昨年10月からは、東・西臼杵郡の町村にも出向くようになりました。
そこで活躍しているのが折込チラシです。「虎の子便」を始めた頃は、社員が一軒一軒回ってチラシを入れていたそうですが、仕事の合間に配る枚数やエリアには限りがあります。さらに東・西臼杵郡に出向くようになってからは、事前に訪問日を知らせる手段が必要と考え、折込チラシを利用することにしたそうです。
「折込チラシは、必要なエリアにしぼって新聞に折り込むことができるのが最大の強み。東・西臼杵郡の町村は、2カ月に1回のペースで回っており、午前と午後に分けて場所を変えて販売するので、告知をするには最適な手段です」と上田社長は話します。チラシにどれを買うか印を付けて買いに来る人も多く、その効果を実感しているそうです。
お菓子を通して伝えたいこと
この3月末で「虎の子便」を利用した人は、延べ3万人に達します。
「楽しみに待っててくださる方が多く、始めて本当によかったと思っています。お菓子は嗜好品と言われますが、心に潤いや安らぎを与えてくれるもの。息苦しいこのご時世、おいしいお菓子は笑顔をもたらす必需品だと思います。私たちの真の商品は、幸福感、季節感、郷土感です」と上田社長。「必笑!」という経営理念のもと、今日も虎彦のお菓子が多くの人に笑顔をもたらします。
チラシは毎回、社長が手作りしている。きれいに印刷されたものよりも手に取ってもらえるのではないかと、あえて白黒・手書きのチラシに。イラストを交えながら、友人に手紙を書く感覚で作っているのだそう。